▪️シンバル独特の溝
【楽器達はもう一度、あなたのそばで蘇る。】というコンセプトのもと、音楽資材を使った制作をしてる。していきたい。
出展している時に会話の7割を超える内容がタイトルにもある音楽資材やコンセプトの説明。
嫌なわけじゃない。むしろ興味を持ってくれてるんやから嬉しい、楽しい。
普段制作ばっかしてると会話自体が少なくなるから出展時は他人(世俗)との対話の大切さとかを再認識する。
このサイトへ素材別にしっかり書き残しておく。
手に取ってくれた方々、理解を示してくれる方々にもっと伝わればいいなと思います。
▪️シンバル
アーティストやリハーサルスタジオ・ライブハウスから提供してもらっている。無償だったり買い取りだったりしてる。
シンバルが不要になるタイミングは9割が【ヒビ・欠け】。
ミリ単位のヒビで音が【変わって】しまう。
鳴らなくなるワケではなく【変わって】しまうところが何とも音楽的やね。(もちろん使い続けるかどうかは自由なんですよ。端のヒビや欠けをカットしてくれるまで会社あります。)
そういった理由で不要になったシンバルを手に入れてアクセサリーなどに使ってます。
ざっくり言うと素材は【真鍮:brass】です。いわゆる銅の合金です。
そこにメーカーの【作りたい音】に向けて様々な金属を混ぜます(錬金)。
【銅+亜鉛=真鍮】+ニッケルや銀など様々。
メーカー別しかもシンバルの種類別になるのでそのレシピは千差万別で大体が社外秘。
そこにレイジング(音の走る溝)の加工が入る。こうなってくるともはや一点モノの様相も垣間見れる。
このレイジング加工がアクセサリーになった時とても面白い表情になる。
【シンバルを切り出したペンダント】
【シンバルから切り出したピンバッヂ】
【シンバルから切り出したライトシェード】
真鍮と比べると硬い。(ゆえにヒビや欠けが発生するんやけど)
シンバルによって【厚い⇔薄い】【硬い⇔柔らかい】みたいな個性があるみたい。
メーカーや品番によって違うので入手する個体によってどんな加工が出来るのか考えている。
全部のアイテムに通じる事は仕上げる際の研磨(磨く作業)。
研磨し過ぎるとレイジング加工が消えてしまう為、いい具合に磨き上げる事にしてます。
通常、研磨といえば光らせてなんぼなんやけどそうもいかない。
いや、磨きまくってもええんやけど。
せっかくのレイジング加工(アクセサリーとしての表情というかテクスチャ) が無くなってしまう。
#400の耐水ペーパーから番手を上げていく(ヤスリの目を細かくしていく)けどシンバルによっては#600とか#1000から始める。
ハンドルーターの場合、自身の手で保持しつつ力の掛け具合と先端工具の交換でレイジング加工を残しながら磨き上げれる。デメリットは手間が掛かり過ぎる為に価格が高価になりがち。
価格を下げる為に杉岡が研磨屋さんに勤めているので数種類、10〜200pcsくらい様子を見ながら機械研磨してみたがなっかなか手間取る。
・アクセサリーゆえのパーツの小ささ
・シェイプの複雑さ
・シンバルの個体差
【シンバルから切り出したアルファベットキーホルダー】
このアイテムは機械研磨で仕上げました。
これらを考慮してメディア(機械研磨に使う石コロみたいな物)を選択。
様子を見ながらシンバルのレイジング加工が消えない程度。かつエッジ部分は丸めないといけない。
デザイン的にエッジが立ってるのはどうしようもないけど、単に研磨不足で痛いのはダメ。
そしてメディアとワーク(81’sの場合はアクセサリーパーツ)を判別する作業の手間。
一つの型で数百pcsなら確実に機械研磨のメリットが出てくるねんけどな。
ここで切り出す手法も大きく関係してくるので書き記しておこうと思います。
シンバル切り出しの手法としては大きく3種類。
ここにもメリットとデメリット。
①糸鋸→遅い。しかし自由曲線は思いのまま。エッジ部分もとても綺麗。
【シンバルから糸鋸で切り出したパーツをオーバーレイしたブレスレット】
②グラインダー→速い。だけど自由曲線は描きにくい。エッジ部分は多少荒れてバリ(切断面のギザギザ)が発生する。
【グラインダーでカットしたシンバル】
③レーザー(製作所)→速い。というより凄い。平面の板を切るのとはワケが違うのに湾曲してるシンバルを切り出してくれる。しかも定尺モノ(規格の決まっている素材)の大きい板ではなく、シンバルは一枚あたりが小さく、サイズや曲がり方が違うのに取り組んでくれる。
【シンバルからレーザーで切り出したボタン】
データ入稿したら自由曲線どころではない精度を出してくれているけどこの技術は製作所の経験に基づく知識量に他ならない。
【シンバルからレーザーで切り出したモチーフ】
ただ、カットする際に高温になる為にエッジ部分のバリが凄まじい。(場合によってはシンバルの厚みを超えるバリが発生する)
ここで機械研磨の話へ戻す。
①・②に関してはエッジ部分は問題なく機械研磨へ回せるがそもそもたくさん製作する手法ではない。
③に関してはエッジ部分に発生するバリをハンドルーターである程度、削り取らなければならない。
削り取らないと機械研磨した際にレイジング加工が消えてしまう。
【レーザー加工と機械研磨】って楽そうに捉えてた。
実際にはそんな事なくて結局ハンドルーターでの処理(僕がするけど)や様々な経験の蓄積や知識が必要ってわかった。わかっちゃった。
今のところ価格はそんなに下げられないね。
けど、【この楽器達はもう一度、あなたのそばで蘇る。】って取り組みをしてて「良い人達と出会えてよかった。」って思います。